その10

「一、面八句並びに四折に、曲折の地の配ある事。
発句は発句の姿有り。平句は平句の姿有。」

 一、連句と申しましてもいろいろございます
たとえば、まあ本格と申しますと、百吟なんぞでございますな
次から次へと百句つづけます

百句を四つの折りにわけて順々に詠んでまいります、
表の八句、十四句づつ折々に、そうして、名残の裏が八句

これ、ただ長々と続くというのでは、ございませんでね
表には表の、一の折には一の折の、と、折りそれぞれに
趣のくふうがございます
まあ、ものごとずべてでございましょうが
ゆるゆる始めて、面白可笑しう遊んだ後は、静かに平らに収めてまいる
それぞれの折りが折ごとに、しごとをするということでございます

句には句の勤めがまたございます
ご承知であろうが、一巻の始め、頭に立ちます句を、発句ともうしますな
発句には発句の、おのずとこうであらねばならぬ、という形がございまして
また、間に連なります句、これを平句ともうしますが
これにはまた、これの大事の勤めがございます



「発句は大将の位なくしては、巻頭にたらず。
平句は士卒の働きなくては、鈍にして役にたたず。
先この心得第一の事也」

発句、これははなんといっても頭に立ちます
大きくどっしりと構えて、見上ぐるような姿、
お姿がみえただけで、お店が引き締まる大だんな様
落ち着いた、一軍率いる大将
この趣ですな、これがなくては勤まるもんじゃぁございません

平句これには平句の勤めというものがまたございます
お店なれば、奉公人、
お店の中で、自分のお勤めは何となにとか
戦なれば兵でございますな
自分のお味方が、今どちらに流れていくのか
先駆けなのか、しんがりなのか、
お役目が読み取れないようでは、お役に立てません
この句ごとの役目、
これを大事に思うことがまずなにより第一でございます

 

「脇の句は、発句と一体のもの也。別に趣向奇語を求むるべからず。
只、発句の余情をいひあらわして、発句の光をかかぐる也。
脇に五つの附方あれども、是皆附けやうの差別にして。趣向を求むるにあらず」

脇、これは、発句と一つのものでございます
発句とは別に、何か変わったことをいってやろうととか
動かしてやろうとか
そういったことを考えるものではありませんな

脇はただただ、発句の高い気持ちをこう、読み取りましてな
発句に言い足し、発句の心をさらに大きく広げるのでございます

脇には五つの詠み方があると申します
相対、打ち添え、違い、心、頃留まり でございますか
まあいろいろ、分けたものでございますな
しかし、これみんな、どう発句につけるかの区別
発句の心をどう受け取り、どう広げるかの区別でございます
けっして、新しいことを詠むやりかた、ということではございませんな



「第三は或は半節半曲なり。次の句に及ばす心、第三の姿情なり。
「て」留めは何の為ぞと工夫しべし。て留めを捌きぬれば、
何留にてもよきぞとなり。」

 第三、これは、いうなれば、半ば脇を立てつつ、半ば新しきことを始める
それが仕事でございます
次に続く句のほうに、目配りをいたします
つぎの句が、なだらかに、続きますようにお考えになることですな
第三は形もまた次へ続くようにいたします

「て」止めともうしますな
何のためにこんなきまり字を使うっていうのか
そこが考えどころでございます
なにやらして、後が続くのでございます
何が始まっても可笑しゅうは無い、
次の句が働きやすいようにとの考えでございますな

このあたりを、飲み込めばもう勝手を知ったようなもの
留めは、「て」でなくとも、おのずと形になってまいります


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